Conference presentations (2025)
We have provided records of academic conferences attended by students from the Arikawa Laboratory.
Asia Oceania Geosciences Society (AOGS) 23rd Annual Meeting (AOGS 2026) で発表を行いました.

2026/8/3-2026/8/6
有川先生及び学生11名が福岡県博多市(福岡国際会議場)で開催されたAOGSに参加し研究成果を発表しました。
【口頭発表】
1. Numerical Modeling of the 2022 Tonga Tsunami with Time-Dependent Forcing
時間依存の外力を用いた2022年トンガ津波の数値モデリング
著者:徳田達彦・有川太郎
本発表では,2022年トンガ噴火津波を対象として,噴火に伴う時間依存の鉛直流速を与えた数値実験を行い,噴出条件の違いが近地津波の伝播および遡上に与える影響について発表しました。静的な水塊モデルでは,トンガタプ島北西岸で観測された大きな津波痕跡高を十分に再現できない一方,鉛直方向の流速を時間的に与えることで,波源近傍に運動量を伴う津波を発生させ,観測された浸水高に近づけられる可能性を示しました。また,単一の噴出よりも複数回の噴出を与えた条件の方が,現地で観測された津波の特徴と整合する結果が得られました。
質疑応答では,静的な水塊モデルと時間依存forcingの違いや,計算条件として与えた鉛直流速の物理的な妥当性について質問をいただきました。これらの議論を通じて,火山性津波の波源モデルを評価するためには,浸水高の再現性だけでなく,噴火規模や噴出時間,波源に与えられるエネルギーおよび運動量との関係を整理することが重要であると改めて認識しました。今後は,噴出面積や水深,噴火規模と鉛直流速の関係を明確にするとともに,カルデラ形成などの他の発生要因も含め,火山性津波の発生・伝播過程をより適切に表現できる解析手法の構築を進めていきたいと考えています。

2. Effect of Virtual Reality Based Tsunami Evacuation Training on Route Selection Behavior
VRを用いた津波避難訓練が経路選択行動に及ぼす影響
著者:内藤礼菜・有川太郎
本発表では、VRを用いた津波避難訓練が、実際の街での避難時における経路選択行動に及ぼす影響について報告しました。従来の津波避難訓練は、適切な避難行動を促すうえで有効である一方、実施時間や場所、訓練方法などに制約があります。これに対し、VR避難訓練は時間や場所の制約を受けにくく、夜間や雨天など、現地では再現が難しいさまざまな環境下で避難訓練を実施できる利点があります。本研究では、従来の現地での避難訓練とVRを用いた避難訓練を実施し、それぞれの訓練が実環境における避難経路の選択にどのような影響を与えるかを検証しました。その結果、避難経路の記憶や経路選択には、訓練経験だけでなく、実環境の地形や道路などの周辺環境も影響する可能性が示され、既往研究とも整合する結果が得られました。発表後の議論では、研究手法や結果の解釈、今後の展開について意見や知見を得ることができました。今回得られた知見を踏まえ、今後もVRを活用した津波避難訓練について研究を進めていきます。

3. A Spatiotemporal Comparison of Numerical and Machine-Learning-Based Weather Models for Wind-Wave Forecasting
波浪予測における数値気象モデルMLWPモデルの時空間特性の比較
著者:小川風輝・白井知輝・田中真史・板垣侑理恵・有川太郎・柴山知也
本研究では、近年様々な機関によって開発が進められているAI気象モデルを用いた波浪予測精度を定量的に評価し、各モデル間の特徴を比較しました。その結果、波浪推算の外力となる海上風の予測精度の善し悪しが、必ずしも波浪予測精度に直結するとは限らないことが明らかになりました。今回のシミュレーションは、主に冬季に着目していたことから、質疑応答の際に他季節での再現性に関する質問をいただき、台風等の極端現象に対する適用性が今後の課題となりました。本研究で得られた、各モデル特性の知見を活かし、今後は数値気象モデルとAI気象モデルを組み合わせた、より高精度なハイブリッド予測手法の確立を目指していきたいです。

4. Effects of Gap Geometry and Installation Angle on Permeability Characteristics of Flap-Gate
フラップゲート式可動防波堤の隙間形状および設置角度が透水特性に及ぼす影響
著者:原田達充・白井知輝・肥田野海斗・硴塚史明・仲保京一・有川太郎
海底設置型フラップゲート式可動防波堤のゲート(扉体)が傾斜して作動する際の隙間を流れて、港内に流入する隙間通過流量の検討について発表しました。研究の流れとしては、傾斜した扉体と隙間を再現した水理模型実験とその結果に基づいた通過流量モデルを提案し、通過流量モデルを組み込んだシミュレーションの妥当性検証を行いました。質疑では、構造物を超える津波が来た場合はどうなるのかという質問を頂きました。大きな津波でも押し波の場合は直立の角度で保持されることを短文で答えましたが、有川先生にサポート頂き、そもそも超えないように設計すること、また超えたとしても粘り強い構造であることを伝えていただきました。特に東日本大震災以降、自分が考えていたよりも他国から見た防波堤の耐久性についてのイメージにギャップがあることを教えていただき、非常に良い経験になりました。今後は、広域でのシミュレーションに向けて、モデル開発を行ってまいります。

5.Experimental and Numerical Analysis of the Stability of Gabions as Armoring Units for Composite Breakwater Mounds
混成堤マウンド被覆材の石かごの耐波安定性に関する実験および数値解析
著者:増田空矢・松村一郎・青田徹・坂本茂・小浪岳治・大城戸秀人・浦井清次・榎本容太・有川太郎
本発表では、混成堤マウンドの被覆材として石かごを用いた場合の耐波安定性について、水理模型実験と数値解析を用いた検討結果を発表しました。実験では、石かごを密着して配置した場合にマウンド法肩部で捲れが発生することや、法肩部の石かごを連結することで滑動被害を軽減できることを確認しました。また、数値解析では、波力による転倒モーメントを用いて捲れを評価するとともに、イスバッシュ式を用いることで初期の滑動被害位置を概ね再現できることを示しました。
今後は、現地への適用に向け、不規則波を含むより実際の海域に近い条件で検討を進める必要があると考えています。

6.Hindcast Accuracy of Storm Surge, Tide, and River Water Levels: A Case Study of Typhoon Lan (2017)
2017年台風21号(Lan)を対象とした高潮・潮汐・河川水位の再現精度の検討
著者:松野史奈・白井知輝・原田達充・有川太郎
本発表では、潮汐・高潮・河川流の重畳を対象に、潮汐の考慮方法が水位の再現精度に与える影響について報告しました。気候変動に伴い、高潮と河川流の重畳リスクの増大が懸念されていますが、現状では、これら複数の要因を統合的に考慮した推算手法の確立や、再現精度に関する知見の蓄積は十分とはいえません。本研究では、領域の境界条件として潮位を与え、モデル内で潮汐を考慮するケースと、潮汐を考慮せずに計算した高潮偏差に天文潮位を線形加算するケースを設定し、水位の再現精度を比較しました。その結果、どちらのケースにおいても、高潮ピーク前後で観測値に対して過小評価する傾向が確認されました。また、気象外力によって、潮汐の考慮方法による再現精度の差が異なる結果となりました。モデル内で潮汐を考慮する場合には、潮汐の再現精度が計算結果に影響するため、その再現性に留意する必要があります。今後は、潮汐の再現精度の向上を図るとともに、河川流の考慮方法や、過小評価の一要因として考えられる波浪の影響について、さらなる検討を進めます。

7.Evaluation of the Effectiveness and Applicability of Stereo Matching for Sea Surface Measurement
ステレオマッチングによる海面計測の有効性および適用範囲に関する検討
著者:丸山里那子・白井知輝・有川太郎
地上ステレオカメラを用いた海面計測手法WASSの現地適用性について発表しました。現在、沿岸域の波浪観測には波高計やLiDARなどが用いられていますが、観測範囲や運用面に課題があります。そこで本研究では、市販カメラの映像から海面形状を三次元再構成できるWASSに着目しました。現地で異なる焦点距離や撮影条件の映像を取得し、処理の成立性と再構成結果を比較しました。その結果、空、陸域、構造物などを除外し、解析範囲を海面に限定するROIを設定することで、平面推定成功率や有効三角測量率が大きく改善しました。また、焦点距離や現地・設置条件によって処理結果が変化する可能性も確認されました。LiDARとの比較では水面変動幅が同程度となりましたが、時刻と位置を厳密に同期していないため、定量的な精度検証には至っていません。今後はWASSと波高計の同期観測を行い、同じ時刻・位置のデータを比較して精度を評価するとともに、長期的な沿岸観測への応用を目指す予定です。

【ポスター発表】
1.Stochastic Fault Modeling, PTHA, and ML-Based Prediction for Tsunami Hazard in the Marmara Sea
マルマラ海における津波ハザードの確率論的断層モデリング、PTHA、および機械学習に基づく予測
著者:Tian Lunpu・徳田達彦・栗原朋也・有川太郎
本研究では、マルマラ海を対象に、確率論的断層モデリングと津波数値計算を組み合わせた津波ハザード評価を行いました。地域の断層特性と経験的スケーリング則に基づき、約100ケースの不均一すべり分布を生成し、JAGURSを用いて津波伝播・浸水計算を実施しました。得られた結果から、震源の不確実性による沿岸津波高や浸水特性の空間的なばらつきを評価しています。今後は、観測点で得られる水位情報と浸水結果の関係に着目し、機械学習を用いた迅速な津波影響予測手法の構築を目指します。

2.A Study on Reproducing Debris Motion Experiments Using STOC-DM
STOC-DMを用いた漂流物挙動の再現実験に関する研究
著者:馮 佳瑜・榎本容太・有川太郎
本研究では、マルマラ海を対象に、確率論的断層モデリングと津波数値計算を組み合わせた津波ハザード評価を行いました。地域の断層特性と経験的スケーリング則に基づき、約100ケースの不均一すべり分布を生成し、JAGURSを用いて津波伝播・浸水計算を実施しました。得られた結果から、震源の不確実性による沿岸津波高や浸水特性の空間的なばらつきを評価しています。今後は、観測点で得られる水位情報と浸水結果の関係に着目し、機械学習を用いた迅速な津波影響予測手法の構築を目指します。

3.Parameter Study of Bottom Manning’s Roughness Coefficient in Submarine Landslide Tsunami Experiment Using a Two-layer Model
二層流モデルを用いた海底地すべり津波実験における底面マニング粗度係数のパラメータスタディ
著者:鈴木快斗・有川太郎・榎本容太・栗原朋也
本研究では,海底地すべり津波の水理模型実験を対象に二層流モデルによる再現計算を行い,下層の運動方程式における底面マニング粗度係数が津波波長・土塊運動に与える影響を評価しました.
その結果,負の最大水位変動量は実験値と概ね一致した一方,土塊の運動は過小評価されました.また,パラメータを変化させても水位変動や波長への影響は限定的であり,土塊が十分に活動しない場合でも水位変動が生じることを確認しました.以上から,津波再現だけでなく,土塊運動の再現性向上が今後の課題であることを示しました.
今後は結果の考察を深めると共に,モデルの改良を進める予定です.

4.Fundamental Study of Regularization Parameters in Wave Source Estimation Methods Without Assuming Fault Parameters
断層パラメータを仮定しない波源推定手法における正則化パラメータの基礎的研究
著者:津金澤和希・徳田達彦・有川太郎
本研究では,近年注目を浴びているアジョイント法を用いた波源推定の精度を大きく左右するパラメータが,波源推定領域の広さによってどの程度変化するのか感度分析しました.その結果,広域な条件における波源推定において,従来のパラメータ探索手法では,常にロバストな解が得られない可能性が示されました.
質問では,波源推定に用いる観測波形の時間幅についての質問や,今回の研究によって明確になった課題の対応策について質問を受けました.
今後は,広域な条件における波源推定の精度について研究を進めていこうと考えています.

第51回 海洋開発シンポジウムにて研究発表を行いました。
また、海洋開発論文奨励賞を受賞しました。
2026/7/1-2026/7/3
有川先生及び学生2名が熊本県熊本市(熊本城ホール))で開催された海洋開発シンポジウムに参加し研究成果を発表しました。
1. 混成提マウンド被覆材としての石かごの耐波安定性と数値波動水槽の適用性
著者:増田空矢,松村一郎,青田徹,坂本茂,小浪岳治,大城戸秀人,浦井清次,有川太郎
[感想(増田)]
今回の海洋開発シンポジウムでは、水理模型実験による石かごの耐波安定性の評価と、耐波設計における数値解析手法の適用可能性について発表させていただきました。また、本論文については海洋開発論文奨励賞をいただきました。
今回の受賞は、有川先生をはじめ、研究室の先輩方、ならびにリーフマット工業会の皆様から多大なるご指導とご支援を賜った結果であり、この場をお借りして改めて深く御礼申し上げます。
また、今回の発表を通して、自身の研究内容をいかに簡潔かつ分かりやすく伝えるかについて考える、大変貴重な機会となりました。今後はこの経験を活かし、ゼミや研究活動においても、聞き手に伝わる発表を意識しながら取り組んでいきたいと思います。
2. Super Well Point工法に関する数値計算手法の検討
著者:伸澤宏祐,山根隆行,高橋茂吉,榎本容太,有川太郎
[発表内容]
地下水位の高い地盤における地下施工では排水工法が不可欠であり,特にSuper Well Point(SWP)工法は井戸内に負圧を作用させることで高い排水効率を有する.しかし,揚水量や井戸配置の設計は試験揚水に依存しており,数値計算による事前評価手法の確立が求められている.本研究では三次元浸透流解析モデルを構築し,実施工事例への適用を通して地下水位低下挙動の再現性を検討するとともに,負圧作用下でのキャビテーションに着目した基礎的検討を行った.その結果,排水能力および透水係数の違いに応じた地下水位低下挙動が再現され,本手法の現地スケールへの適用可能性が示唆された.さらに,土粒子間流れを模擬した基礎的な数値計算により,局所的な負圧領域の形成とキャビテーションの発生を確認し,本計算条件下では気化率が0~20%程度となることが示された.
3. モノパイル式洋上風力発電機基部における石かごを用いた洗掘防止工の耐波安定性に関する研究
著者:小島弘暉,菊池政男,片山猛,榎本容太,有川太郎
[発表内容]
モノパイル式洋上風力発電機基部における洗掘防止工として,国内では袋材を用いることが多い.他方,多様な海象条件に対応するために重量が確保しやすい石かごの適用性の検討が行われた.一方,波浪に対する安定性については不明であるため,本研究では石かごの耐波安定性について水理模型実験を主として検討を行った.その結果,石かごの滑動被害が見られ,石かご同士に隙間がある場合には安定性が低下することが分かった.実験結果から,石かごの平均滑動量がフィルター層砕石の最小粒径と一致した際の波高を推定し,得られた波高をHudson式に代入することで安定数を算出した.数値計算を用いた検討では,石かご同士の隙間で底面流速の増大が確認され,局所的な動水勾配の増大に起因するフィルター層の吸出しが発生する可能性が示唆された.



Participation in the 72nd Coastal Engineering Lecture Meeting
2026/5/17-2026/5/22
有川先生と学生5名がアメリカ・テキサス州で開催されたICCEに参加し研究成果を発表しました。
【口頭発表】
1. NUMERICAL MODELING OF THE 2022 TONGA VOLCANIC TSUNAMIUSING A TIME-DEPENDENT VERTICAL FORCING APPROACH
著者:德田達彦,有川太郎
火山性津波は、最も破壊力が高い一方で、最も理解が進んでいない自然災害の一つである。通常、海底の断層の変位によって引き起こされる地震津波とは異なり、火山性津波は、カルデラの崩壊、火砕流、海底地すべり、溶岩ドームの崩壊、爆発的噴火など、多様なメカニズムによって発生し得る。1883年のクラカタウ噴火は、その壊滅的な潜在力を如実に示す事例であり、津波の到達高は40メートルを超え、数万人の死者を出した。2022年1月15日、フンガ・トンガ–フンガ・ハアパイ(HTHH)海底火山は、近年の歴史上最も強力な噴火の一つを起こした。この噴火により発生した衝撃波は地球を一周し、太平洋全域で観測された津波を引き起こした。日本、米国、南米では、遠方域の振幅が約1 mと観測された。これらの信号は、大気中のラム波および海洋と効果的に結合した重力波に起因すると考えられている。対照的に、トンガを襲った近距離域の津波ははるかに甚大な被害をもたらし、津波の遡上高は10 mを超え、トンガタプ島では深刻な浸水被害が発生した。この近距離津波の物理的メカニズムは依然として不明である。なぜなら、静的な初期海面変位を前提とする従来のモデルでは、観測された浸水範囲やランナップ高を一貫して再現できていないからである。このことは、動的プロセスの重要性を浮き彫りにしている。噴火による垂直方向の水の動き、火口の急速な崩壊、および複数の噴出パルスが、その要因として示唆されている。実験室での実験や最近の数値研究によれば、噴出口におけるわずかな鉛直強制力であっても、不釣り合いに大きな津波を発生させ得ることが示唆されている。これらの限界に対処するため、本研究では、3次元数値フレームワーク内に時間依存の鉛直強制モデルを導入し、2次元伝播モデルと結合させることで、動的強制力が観測された津波の特性をより適切に再現できるかどうかを評価する。
2. Evaluating Virtual Reality as a Tool for Tsunami Evacuation Training
著者:内藤礼菜,有川太郎
津波避難訓練は、避難の遅れを減らし、溺死のリスクを低減することが知られている。しかし、従来の訓練は時間、場所、シナリオの制約により限界があり、参加率が低いことも多い。仮想現実(VR)は世界中で災害教育や避難訓練への応用が進んでいるものの、津波シナリオに特化した活用は依然として限定的である。本研究では、VRを活用した津波避難訓練システムを開発し、従来の実地訓練および事前訓練なしのケースと比較することで、その有効性を評価した。参加者は、VR訓練、実地訓練、および訓練なしの3つのグループに分けられた。VR環境は、写真測量法を用いて構築された研究対象地域の3Dモデルを使用して作成された。参加者はヘッドマウントディスプレイとコントローラーを使用してVR訓練を行った。翌日、全参加者が避難シミュレーションを実施し、指定された避難場所および避難経路の正しい選択に基づいてパフォーマンスが評価された。その結果、VR訓練を1回行っただけでも、訓練なしの場合と比較して、避難場所および避難経路の両方における正しい対応率が向上したことが示された。VR訓練を3回実施した場合は、実地訓練と同等のパフォーマンスが得られた。特に注目すべきは、1回のVRセッションによる効果が、1回のセッションと実地訓練との差よりも大きかったことであり、これはたった1回の体験でも記憶の定着を促進できることを示唆している。これらの知見は、VR訓練が、場所や時間に縛られない柔軟な手法として、避難の遅延やリスクを低減できることを示唆している。今後の研究では、より大規模な参加者グループを対象とし、道路網の複雑さや様々な災害状況が記憶の定着に及ぼす影響を検証すべきである。
3. Wind-blown sand behavior near the shoreline under the influence of moisture
著者:糟谷侑希,有川太郎
砂浜は複数の機能を果たしており、これらの機能を維持することは重要である。Katanoらは、風による砂の飛来に対する対策が講じられていた沿岸部においても、海岸線の後退が加速し、波打ち際から風による砂の飛来が生じていることを報告した。さらに、飛砂フラックスを記述する従来の輸送方程式は、乾燥した砂を前提としており、水分を無視している。本研究では、現地観測に基づいた実験を実施した。沿岸地形を模擬した実験は、傾斜部と平坦部が接続された断面を用いて実施された。水の注入を行うか否かによって、湿潤な斜面と乾燥した斜面が作成された。乾燥条件下では、斜面によって気流の断面積が減少しており、閾値摩擦速度を超えると、斜面と平坦面の境界で均一な砂表面の沈下が始まった。水注入を行うと、吸着力により湿潤領域が拡大し、断面積が減少し、風速が増加した。比較のため、水を注入せずに木製ボードを用いて同じ断面形状を再現した。実験の結果、侵食パターンに明確な違いが明らかになった。乾燥状態では、砂面の低下は比較的均一であった。湿潤状態では、湿潤領域が表面凝集力の増加により風による砂の輸送を抑制したが、斜面と平坦面の境界付近の隣接する非湿潤領域では急速な洗掘が生じた。砂中の水分は、海岸線付近の砂面の低下を促進し、海岸線の後退を加速させる可能性がある。したがって、湿潤条件下における海岸線付近の風による砂の移動のメカニズムを解明することは、海岸変形予測の精度を向上させ、基礎的な理解を深めるために不可欠である。


【ポスター発表】
1. DVELOPMENT OF A COUPLED FVM-MPM ANALYSIS MODEL FOR HIGH-VELOCITYSEEPAGE FLOW IN POROUS MODEL
著者:榎本容太,有川太郎
大変形を受ける透水性粒状媒体を通る高速浸透流に対して、密結合型有限体積–物質点法(FVM–MPM)フレームワークを提案する。流体相の解法には、CADMAS-SURF/3D-2F(CS2F)を用いる。これは、多孔質媒体の抵抗を付加した非圧縮性ナヴィエ–ストークス体積流体ソルバーに多孔質媒体抵抗が追加されたものである。バルク抵抗は、ダーシー–ブリンクマン抵抗とデュピュイ–フォルハイマー寄与を組み合わせたものであり、多孔率の推移およびその時間微分は、骨格の変形によって誘発される空隙率の変化を表現するために、連続方程式およびVOF移流方程式に組み込まれている。固体骨格は、明示的MPMによって離散化され、格子–粒子間の変換および接触処理は、再メッシュ化を行わずに処理される。ポテンシャル関数を用いて導出された圧力投影ステップは、SMACアルゴリズムと整合性のあるヘルムホルツ問題を生成し、CS2FとMPM間の各時間ステップにおける強結合を、スタッガード反復なしに可能にする。この定式化は、標準的な多孔質流ベンチマーク—充填カラムの圧力損失、急加速、および収束–発散流路—ならびに、リップラップや瓦礫マウンド防波堤を代表する透水性マウンド構成を用いて評価された。比較対象としては、単一点および二重点MPM近似、線形抗力のみを考慮したCS2Fモデル、および弱結合型CS2F–MPM変種との比較が行われた。結果から、(i) 多孔率の時間微分を含めることで、高透水性の土壌における圧力解法が安定化すること、(ii) フォルヒハイマー補正により、慣性支配領域においても精度が向上すること、および (iii) 強結合により、u–p定式化では捕捉できない、浸透と変形間のフィードバックが捉えられることが示された。このフレームワークは、ダーシーに基づくアプローチの領域境界を明確にし、越流と内部侵食が共存する沿岸構造物問題に対して、粒子スケールの輸送が明示的に解かれていない場合でも、実用的かつスケーラブルなツールを提供する。ベンチマークデータとスクリプトが提供されている。
2. VALIDATING TSUNAMI DETECTION METHOD BASED ONSWASH ZONE MONITORING WITH CCTV CAMERAS
著者:白井知輝,有川太郎
近年、低コストの沿岸CCTVカメラを用いた監視が、高価な沖合観測ネットワークを補完する有望な手段として注目されている。本研究は、実際の津波事象に適用することで、CCTV映像から高周波の海岸線変動を自動的に抽出する画像解析手法の有効性を検証することを目的とする。この手法は、短い時間窓内の輝度分散に基づくランナップ波の追跡と、色ベースの陸水マスクを組み合わせることで、1~2 Hzという高周波かつノイズの多い周波数帯において、ランナップ高さの安定したモニタリングを可能にする。本手法は、2024年の能登半島地震津波および2025年のカムチャツカ半島地震津波の映像に適用された。その結果、砂浜、礫浜、防波堤など、さまざまな地形条件下や、日中の朝から夕方までの多様な天候、すなわち晴天、曇天、雨天、および照明条件下においても、海岸線を概ね追跡できることが示された。津波のランナップ高の時系列データから抽出された周期成分は、数値シミュレーションや沖合の観測結果と比較しても、妥当な振幅と位相を示した。海岸線検出タスクで一般的に用いられる、10分ごとの時間平均画像を用いた従来の手法との比較からも、津波の振幅を正確に推定するためには、本研究で提案したような高頻度モニタリングの重要性が実証された。検証は比較的小規模な津波に基づいているものの、これらの結果は対象となる事象に対する提案手法の有効性を裏付けるものであり、将来の津波監視能力を向上させる可能性を浮き彫りにしている。今後の課題としては、より大規模な津波、特に砕波を伴うものや、海岸に対する入射角の大きい事象への適用可能性を検証することが挙げられる。
